『コールミー・バイ・ノーネーム』は、作家・斜線堂有紀によるガールズラブ・ミステリー小説です。2019年に星海社FICTIONSから刊行され、2025年1月には毎日放送(MBS)のドラマフィル枠で実写ドラマ化されました。工藤美桜と尾碕真花がダブル主演を務め、名前をめぐる謎と、簡単には言葉にできない二人の恋愛を描いています。
2026年現在、作品を知った人が気になるのは、原作小説のあらすじや登場人物、ドラマ版のキャスト、原作と映像作品の違い、そして物語の結末と考えられます。ここでは、講談社・星海社の書誌情報、MBSの公式番組情報、出演者のインタビュー、視聴者レビューをもとに、作品の基本情報からドラマ化の経緯、評価されているポイントまで整理します。
【作品の基本情報】『コールミー・バイ・ノーネーム』はどんな小説?

『コールミー・バイ・ノーネーム』の特徴は、女性同士の恋愛を描くガールズラブの要素と、相手の本当の名前を探し当てるミステリーの仕掛けが一体になっている点です。恋愛関係が深まるほど謎が解けていく一方で、謎が解けること自体が二人の関係の終わりにつながるという、矛盾をはらんだ設定が物語を動かします。
原作を手がけた斜線堂有紀は、2016年に第23回電撃小説大賞のメディアワークス文庫賞を受賞してデビューした作家です。ミステリーを軸に、人間関係に潜む執着や愛情、登場人物の内面にある矛盾を描いてきました。本作も、単純に犯人や答えを当てるタイプの謎解きではなく、人物の過去と感情を読み解くことが重要な作品です。
講談社および星海社の書誌情報によると、原作小説は2019年9月刊行の星海社FICTIONS作品で、イラストはくわばらたもつが担当しています。紙版はB6判、240ページ。ジャンルとしては百合長編小説に位置づけられ、恋愛小説とミステリーの両方に関心がある読者に向いた一冊です。
タイトルの「Call me by no name」は、名前を呼ぶことと、その人自身を理解することの関係を考えさせる言葉でもあります。名前を知れば相手を理解したことになるのか。逆に、名前を知らないままでも相手を大切にできるのか。作品の中心にある問いは、恋愛の謎解きだけにとどまりません。
【あらすじ・登場人物】名前当てゲームから始まる危うい恋
物語の主人公は、英知大学に通う世次愛(よつぎ・めぐみ)です。ある夜、愛はゴミ捨て場にいた美しく、どこかつかみどころのない女性・古橋琴葉(ふるはし・ことは)と出会います。琴葉を自宅に招いたことをきっかけに、愛は彼女と友人になりたいと考えますが、琴葉はその申し出を受け入れません。
さらに愛は、琴葉という名前が改名後のものであることを知ります。そこで琴葉が持ちかけるのが、彼女の本当の名前を当てるまで恋人として付き合い、正解したら友人に戻るという奇妙な賭けです。
愛はこの条件を受け入れ、二人は仮初めの恋人として関係を始めます。デートや日常のやり取りを通して、愛は琴葉に対する恋心を深めていきます。しかし、相手を知ろうとするほど、琴葉の過去に隠された事情が明らかになり、二人の関係は不安定になっていきます。
物語の要点は、愛が名前を当てることを単なるゲームとして扱えなくなるところです。最初は約束を果たすための謎解きだったはずが、恋愛感情が生まれたことで、正解することそのものが別れを意味するようになります。
主要な登場人物は次のとおりです。
- 世次愛:琴葉と出会い、名前当てゲームを通して初めての恋と向き合っていく大学生。
- 古橋琴葉:改名前の本当の名前と過去を隠している、ミステリアスな女性。自分の名前にまつわる事情を抱えている。
- 矢端束:愛の周囲にいる人物。愛が琴葉との関係を見つめ直すうえで重要な役割を担う。
- 村山早苗:愛の友人。二人の関係に対する反応を通じて、友情や嫉妬といった感情も描かれる。
- 村田学:琴葉と関わりを持つ人物。愛が琴葉の行動や過去を理解するための手がかりを与える。
- 橋立天:琴葉の過去に深く関係する女性。物語後半で明らかになる事情に関わっている。
公式あらすじでは、物語のテーマとして、他人と向き合うこと、自分を受け入れること、幸せを知ることが示されています。恋愛の成就だけではなく、過去に傷ついた人が自分自身をどう捉え直すのかという点も、本作を読み解くうえで欠かせません。
【ドラマ版の基本情報】2025年1月放送・キャスト・スタッフ一覧
テレビドラマ版は、MBSのドラマフィル枠で2025年1月9日に放送を開始しました。全8話の構成で、世次愛役の工藤美桜と古橋琴葉役の尾碕真花がダブル主演を務めています。MBS公式番組ページでは放送終了が案内されており、2026年現在は放送当時の作品情報や配信情報を確認する形になります。
原作の特徴である、恋愛と名前当てミステリーの組み合わせはドラマ版にも引き継がれています。監督は枝優花、脚本は松ケ迫美貴。水槽によるオープニング主題歌「スードニム」と、yonigeによるエンディング主題歌「Without you」も作品を彩りました。
| 項目 | 内容 | 確認できる情報・見どころ |
|---|---|---|
| 原作 | 斜線堂有紀『コールミー・バイ・ノーネーム』 | 星海社FICTIONSから2019年9月刊行 |
| 放送開始 | 2025年1月9日 | MBSのドラマフィル枠で放送開始 |
| 話数 | 全8話 | 名前当てゲームから真相、二人の選択までを描く |
| 世次愛役 | 工藤美桜 | 琴葉との出会いを通して変化していく主人公 |
| 古橋琴葉役 | 尾碕真花 | 謎めいた言動と、過去を抱える人物像を表現 |
| 矢端束役 | 中井友望 | 愛の心情や選択に関わる人物 |
| 村山早苗役 | 三原羽衣 | 愛の友人として関係性に変化をもたらす |
| 村田学役 | 橋本涼 | 琴葉の事情を知る手がかりに関わる人物 |
| 橋立天役 | さとう珠緒 | 琴葉の過去に関係する重要人物 |
| 監督・脚本 | 枝優花・松ケ迫美貴 | 映像表現と脚本によって小説をドラマへ再構成 |
| 主題歌 | 水槽「スードニム」/yonige「Without you」 | オープニングとエンディングを担当 |
キャストについては、MBS公式の出演者・スタッフ情報で各役名が公表されています。工藤美桜と尾碕真花は、スーパー戦隊シリーズでそれぞれピンクの戦士を演じた経歴があり、本作ではともにドラマ初主演を務めました。MANTANWEBのインタビューでも、二人が以前の共演経験を持ち、今回の作品で再び共演したことが紹介されています。
放送はMBSのほか、テレビ神奈川、テレビ埼玉、群馬テレビ、とちぎテレビ、チバテレでも順次始まりました。MBSでの放送時間は毎週木曜深夜1時29分です。なお、2025年2月27日には最終話が放送され、同年7月2日にはBlu-ray BOXの発売が予定どおり告知されています。
【ドラマ化の経緯と原作との違い】映像だからこそ伝わる感情
ドラマ化は2024年12月16日にMBSから発表されました。企画の背景を知るうえで注目したいのが、監督を務めた枝優花のコメントです。MBS公式のスタッフコメントによると、枝監督は原作を読んだ際に「今この作品をやらなければならない」と感じ、プロデューサーに連絡したと説明しています。
このコメントからは、単に人気小説を映像化するだけではなく、名前を捨てた人物が誰かに自分自身を見つけてもらおうとする物語に、監督自身が強く惹かれたことがうかがえます。枝監督は、他人から理解されたいと願う気持ちと、相手の期待に応えようとして自分を変えてしまう苦しさにも触れています。作品のテーマと映像化の動機が重なっている点は、ドラマ版を理解するうえで重要です。
原作者の斜線堂有紀も、MBS公式の原作情報ページにコメントを寄せています。ドラマ化の話を受けたときには驚いた一方、文章が映像になることで新たな感情や余白、解釈が生まれたことを楽しんだと述べています。原作者が映像版を単なる再現ではなく、別の表現として受け止めていることが分かります。
では、原作小説とドラマにはどのような違いがあるのでしょうか。
最初に、小説は文章によって人物の内面や言葉にならない葛藤を描きます。読者は愛や琴葉の行動を読みながら、その言葉の裏にある感情や、二人が互いをどう理解しているのかを想像できます。一方、ドラマでは俳優の表情、視線、声の調子、沈黙、映像の色調、音楽などが感情を伝える手段になります。
構成にも違いがあります。ドラマ版は全8話で物語を再構成し、第7話「彼女の証明」で琴葉の本当の名前と真実に迫り、最終話「愛の証明」では、名前当てゲームが終わった後の二人の選択を描きます。謎の答えを明らかにするだけでなく、答えを知った後にどう生きるかという問題を最終話の中心に据えているのが特徴です。
したがって、原作とドラマの違いを考える際は、台詞や場面が一致しているかどうかだけでなく、媒体ごとに感情の見せ方がどう変わったかに注目すると、より深く楽しめます。小説では内面を想像し、ドラマでは俳優の演技や演出から心情を読み取る。その両方を体験することで、作品の解釈が広がります。
【結末と物語の核心】本当の名前が明らかになると何が変わる?
ここからは結末に触れます。未視聴・未読の方はご注意ください。
物語後半では、琴葉の本当の名前と、その名前を捨てるに至った過去が明らかになります。琴葉が名前を変えた背景には、本人にとって深刻な家庭内の事情があり、名前は単なる呼び名ではなく、過去の苦痛と結びついたものとして描かれます。原作のネタバレ解説では、改名前の名前として「夜伽」が紹介されています。
名前当てゲームのルールでは、愛が本名を当てたら二人は恋人ではなく友人に戻ることになっています。しかし、名前が明らかになったからといって、二人の感情まで簡単に整理できるわけではありません。琴葉は約束どおり友人に戻ろうとし、愛を突き放すように距離を取ります。
ドラマ最終話「愛の証明」では、琴葉が愛と過ごした日々を振り返り、早苗や村田からも言葉をかけられます。愛と琴葉が最後にどのような未来を選ぶのかが、物語の締めくくりになります。MBS公式の最終話あらすじも、名前が明らかになった後の二人の選択を中心に据えています。
この結末の重要な点は、謎が解ければすべてが解決するわけではないことです。名前を知ることは、相手の過去を理解するための入り口にはなっても、その人の苦しみを完全に理解したことにはなりません。愛に求められるのは、琴葉の過去を知ったうえで、彼女とどう向き合うかを考えることです。
また、琴葉にとっても、自分の名前や過去を他人に知られることと、自分自身を受け入れることは同じではありません。誰かに理解してもらいたい気持ちと、理解されることへの恐れが同時に存在します。この矛盾が、二人の恋愛を単純なハッピーエンドや悲恋の枠に収まらない物語にしています。
【評判・感想と作品の魅力】視聴者を引きつける3つのポイント
『コールミー・バイ・ノーネーム』の魅力は、ガールズラブというジャンルだけでは説明できません。恋愛、ミステリー、過去のトラウマ、自己認識という複数の要素が、名前当てゲームという一つの仕掛けで結びついている点に独自性があります。
1.恋愛とミステリーが同時に進む構成
通常の恋愛作品では、二人が気持ちを確かめ合うことが関係の前進につながります。しかし本作では、愛が琴葉の本当の名前に近づくほど、約束に従えば恋人関係が終わってしまうという矛盾が強まります。謎を解きたい気持ちと、答えを知りたくない気持ちがぶつかる構造が、物語に緊張感を与えています。
2.工藤美桜と尾碕真花の対照的な演技
愛は、琴葉を理解しようとするまっすぐさを持つ人物です。一方の琴葉は、自分の過去を簡単には語らず、相手を近づけたり遠ざけたりします。この対照的な人物像を、工藤美桜と尾碕真花が演じ分けています。MBS公式の出演者コメントでは、工藤が愛の優しさや成長について、尾碕が琴葉のつかみどころのない輪郭や繊細さについて語っています。
3.名前を通して描かれる自己認識
名前は他人が自分を呼ぶための記号であると同時に、自分が何者なのかを意識させるものでもあります。本作では、名前を変えることが過去から距離を取る行為として描かれる一方、他人に本当の名前を呼ばれることが、封じていた記憶と向き合うきっかけにもなります。相手を愛することと、自分自身を受け入れることがつながっている点が、作品に深みを与えています。
評判については、レビューサイトFilmarksの作品ページで、確認時点において評価3.6/5、レビュー435件と表示されています。レビューには、主演二人の演技や映像の美しさ、作品全体の独特な雰囲気を評価する感想が見られる一方、評価は一様ではありません。これらは投稿者による評価であり、すべての視聴者の意見を代表する統計ではありませんが、作品が一定の関心を集めていることを示す参考情報になります。
視聴前に知っておきたいのは、本作が軽い恋愛コメディーではないという点です。家庭内の深刻な問題や、過去の苦痛を想起させる描写も含まれます。MBS公式の第6話あらすじにも、フラッシュバックやショックにつながる可能性のあるシーンについて注意書きがあります。繊細な心理描写や重いテーマを扱う作品が好きな人には響きやすい一方、気軽に楽しめる明るい恋愛ドラマを求める人には、重く感じられる場面もあるでしょう。
2026年現在、ドラマ版の視聴を考えている場合、MBS公式の配信情報ページにはFOD、Hulu、U-NEXTが掲載されています。ただし、配信状況や見放題の対象は変更されることがあるため、実際に視聴する際は各サービスの最新の作品情報を確認するのが確実です。
【コールミー・バイ・ノーネーム】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:『コールミー・バイ・ノーネーム』の原作小説はいつ発売されましたか?
A1:斜線堂有紀による原作小説は、2019年9月に星海社FICTIONSから刊行されました。イラストはくわばらたもつが担当しています。
Q2:ドラマ版はいつ放送され、全何話ですか?
A2:2025年1月9日にMBSのドラマフィル枠で放送が始まり、全8話で構成されています。工藤美桜が世次愛役、尾碕真花が古橋琴葉役を務めました。
Q3:原作小説とドラマ版はどちらから見る・読むのがおすすめですか?
A3:登場人物の内面や文章ならではの余白をじっくり味わいたい人には原作小説、俳優の演技や映像、音楽による感情表現を楽しみたい人にはドラマ版がおすすめです。名前当てゲームの仕掛けを先に知りたくない場合は、結末に関する情報を避けて原作から読み始めるとよいでしょう。
『コールミー・バイ・ノーネーム』は、斜線堂有紀による2019年刊行の小説を原作とし、2025年1月に毎日放送で実写ドラマ化されたガールズラブ・ミステリーです。工藤美桜と尾碕真花がダブル主演を務め、名前当てゲームを通して、愛と琴葉の恋愛や過去、自己認識を描いています。
原作小説では文章による心理描写を、ドラマ版では俳優の表情や映像、音楽による感情表現を楽しめます。原作とドラマの両方に触れることで、同じ物語が異なる媒体でどう表現されるのかを比較できるのも魅力です。
作品を選ぶ際の判断基準は、ガールズラブというジャンルだけでなく、謎解きと繊細な人間ドラマの組み合わせを楽しめるかどうかです。恋愛の行方だけでなく、「相手の本当の名前を知ること」と「相手を理解すること」は同じなのかという問いに関心がある人なら、2026年に初めて触れても読み応え・見応えのある作品です。